「日本史に登場する人で一番好きな人は?」と聞かれたら、「小当女(または古麻佐亮。いずれもコマサメと読む)という女性を挙げることにためらいはない。
この人は奈良時代の但馬国(今の兵庫県北部)の住民で、17歳で奴隷として平城京に送られたのだけど、奈良の法華寺の現場で下総(千葉)出身の稲主亮という女性と親しくなり、2人で逃亡して一月後に下総にたどり着くという偉業を成し遂げたのである。
残念ながらこの人たちは下総で捕まり、その後どうなったかは記録がないのでわからないのだが、やったことのスケールといい動機といいシスターフッドといい、日本史でこれほどエモい人を僕は知らない。天下統一とか主君の仇討とか、そんなくだらない「偉業」をすべて吹っ飛ばすパワーがここにはある。